今から36年前、私が最初に乗った車が「黄色いフォルクスワーゲン・ビートル」でした。
当時はどうしてもこのクルマが欲しくて、父親とワーゲンの販売店を何軒も回りました。
そしてようやく手に入れたのがコレ、1976年K-ジェトロニク噴射式の排気量1500ccの1200LSEでした。
フロントガラスが1300Sなどの曲面ではなく、フラットタイプのものです。
フロントリッドも1303のように中央が膨らんでいない、スマートなラインが特徴です。
ワーゲンといえば、フロントにエンジンが無いので有名でした。
ここは一応「トランク」ということになっていましたが、高さも幅もなく、大きなものは入りませんでした。
前部中央にドカっとスペースを取っていたのはスペアタイヤです。
でもこれが二つのとても重要な役割を担っていました。
一つ目はここにあることで、万が一前のクルマや障害物に追突した際に、バンパーだけでなくこのスペアタイヤで衝撃を吸収して乗員の安全を確保するというのです。
合理的で安全重視の好ましい設計です。
そしてもう一点。
写真ではわかりにくいですが、スペアタイヤのホイール中央の中にウインドウォッシャー液のタンクが収まっています。
普通のクルマならウイドウウォッシャー液は電動モーターで噴射させるのでしょうけど、このワーゲンビートルはスペアタイヤの空気圧だけで噴射するのです。
そのためスペアタイヤには標準より少し高めの空気圧を掛けています。
噴射する機構は、このスペアタイヤからゴムホースが運転席のハンドル横のワイパーレバーにつながっていて、操作するともう一本のゴムホースに接続してフロントガラスに向けてウォッシャー液を噴射するのです。
しかももしスペアタイヤの空気圧が下がってくるとウインドウォッシャー液が飛ばなくなるため、スペアタイヤの空気圧チェックも同時に出来るというものです。
これもまたとてもよく考えられているようでしたが、大きな欠点もありました。
このゴムホースが劣化しやすく、亀裂が入ってしまうのです。
そうなるとハンドル横からウインドウォッシャー液が室内めがけて噴き出し、シートが水浸しになってしまうのです。
実際、私も二度ほどその洗礼を受けました。
私が一番気に入っているワーゲンビートルのスタイルは、この斜め後方から見たところです。
なんともグラマラスなヒップデザインだと思いませんか。
この年式のビートルは排気管が右一本出しになっているのが特徴です。
リアエンジンフードには雨の時でもエンジンルーム内に水が入らないようにオプションのエンジンフードを付けました。
また「D」のステッカーも当時のビートルにはおなじみのステッカーチューンです。
エンジンフードのエンブレムは左側に純正の「FUEL INJECTION」の他に、ランプユニットの下に「TURBO」とあるのはご愛敬です。
この頃のクルマには、ボディの静電気を逃がすためにゴム製のものをつり下げて地面に接しさせておくものがよく見かけられました。
今のクルマにはまず見ないですね。
リアウインドウの「FLAT4」「Shell Auto」「Scat」はいずれもワーゲン専門ショップのものです。
ここでいろんなパーツやアクセサリーを購入していました。
ワーゲンはフロントにエンジンが無いかわりにリアにエンジンが収まっています。
後輪駆動のクルマで、駆動輪の上に重量のあるエンジンを載せて接地性を高めるのも理にかなっています。
ワーゲンビートルのエンジンも、初期の1200ccクラスの時は実にシンプルでルーム内もスカスカでしたが、電子燃料噴射式の1500ccとなると狭いエンジンルーム内はぎっしりでした。
今のほとんどクルマは水冷ですが、ワーゲンのエンジンは空冷です。
冬の寒い時のヒーターは、このエンジンで暖まった空気を室内に取り込んでいました。
右下の黒いパイプが室内に暖気を送るダクトです。
これも段ボール製で痛みやすいので破れてしまうことが多々ありました。
そんな時は東急ハンズでアルミ製のダクトホースを買ってきて自分で交換していました。
さて、ようやくこの記事のタイトルにあった「ガソリン蛇口とゼンマイの大ネジ」が出てきます。
ワーゲンビートルのガソリンタンクは、フロントフードの中にあります。
そのためにトランクルームが狭くなってしまっています。
そしてガソリン給油は、この水道の蛇口にホースをつないで行います。。。。ウソです(笑;
これは当時流行ったバラエティーのジョーク用品で、プラスティックで出来たホンモノそっくりの水道の蛇口を模したもので、根元に吸盤がついていて貼り付ける事が出来ます。
これを付けたまま走っていき、ガソリンスタンドで給油をお願いすると、スタンドのお兄さんはたいてい驚いてそしてニヤッとしてくれます。
そして給油しながら上のハンドルをひねっていましたね。
それが楽しくやっていました。
今はもうコレは売っていないんでしょうね。
そうしてビートルにガソリンを入れるのですが、実はワーゲンはエンジンではなく、ゼンマイで動くのです。。。。
そのネジを巻くハンドルがコレです。
これもウソです(ってわかりますね)
このゼンマイネジもなかなか評判はよかったですね。
走行中に飛ばされないようにひもで結んでいました。
街中を走っていると子ども達が見つけて大喜びでした。
上の写真で、車内に付けた揺れるDr.スランプ アラレちゃんが時代を感じさせます。
ビートルの室内は実にシンプルです。
メーターは速度計と燃料計だけで、タコメーターも時計もありません。
(あっ、でも今乗っている日産ジュークも時計付いてなかった)
窓が平面で垂直に立っているので、ダッシュボードの上とても狭いんです。
ドアには三角窓があり、タバコをすってもすぐに換気できました。
もちろん電動ウインドウではないので手回し式です。
標準ではヒーターしか付いていないのですが、私のはオプションでクーラー(エアコンではない)を付けていましたが、これがまあ効かない事!
走っていれば三角窓を開けている方がよっぽど涼しかったです。
アクセル、クラッチ、ブレーキのペダルは現在のクルマのように上から下がっているのではなく、オルガンのように床から生えています。
そして座席も普通の椅子のように立っているので、深く腰掛けて足を前ではなく下に降ろすような感じで乗車していました。
あまりにシンプルだったので、操作ボタンやレバーなどはすべてウッド製のものに付け替えました。
温度計や時計、それに中央下にあるようなコンソールパネルをオプションで取り付け、ここにタコメーターを増設しました。
ハンドル右のレバーがウインドウォッシャー液の噴き出し口です(笑;
ダッシュパネル下の格子のある横長の部分が、後付けしたクーラーです。
標準ラジオもAMだけだったのでコンソールにFMとカセットを追加しました。
ワーゲンビートルは実用性もさることながら「おもしろくて楽しくてなんぼ」のクルマだと思っていたので、リアシート後ろのリッドに上にはカーステ用のいスピーカーの他にワーゲンのミニカーやぬいぐるみを置いていました。
このあたりは最近の軽カーにも通じるものがありそうです。
いろいろ書いてきましたが、とても大好きで懐かしいクルマでした。
今でもたまに街でこの初代ワーゲンビートルを見かけるとなんとなくうれしく、そして若かったあの頃を思い出します。
コメント
DON さんへ、
ビートル好きの方は、
とことん旧TypeⅠが好きですよね。
>ウオッシャーホースもコーティング化、
>暖房の空気の汚れに途中フィルター
なるほど、私よりさらに一歩も二歩も先の
対策をやっていたんですね。
マフラーの横出しも流行りましたね。
うーん、これだけで一晩と言わず、
DONさんと語り明かせそうです。
懐かしい写真にビートルの説明ありがとうございます。
私も大好きでプラモも沢山作りました(^^)v
ヒーターホースは私もすぐに変更して、ウオッシャーホースもコーティングしているものと交換して、空冷の弱みだった暖房の空気の汚れも途中でフィルターをかませたりして(^_^;)
マフラーは横に出して、特有の音を楽しんでいましたね(^^)v
ziromei さんへ、
ワーゲンビートルは日本に入ってきて「外車」の中でも
もっとも身近に見られたものだったクルマです。
乗っていた方も多かったのでしょう。
ドラッグレースにまで出られたんですか!
すごいですね。
ワーゲンのエンジンとシャーシを改造した車も多かったようです。
ジン さんへ、
うう、年齢差を感じます。
私がバイクに乗り始めたころ、
ジンさんはようやく小学生になったばかりなんですね。
ヨーロッパ車は個性豊かなクルマが多くて、
プラモデルやミニカーも人気でした。
私もワーゲンばかり何台もミニカー集めたけど
今はどうなっているのか、わかりません。
1976年というと、
俺はまだ4歳ですね^^;
この時代の欧州車はデザインが秀逸でしたね。
俺も何台か所有していましたよ。
ミニカーを(笑
懐かしいですね。
私の先輩がワーゲンに乗っていて、たまに乗せさせて頂いた思い出があります。
Scatさん主催の、冨士スピードウェイでのドラッグレースもエントリーした記憶も御座います。
ファイバーボディーのチョップトップワーゲンにビックリしましたね。
私のタイムは、14秒がせいいいっぱいでしたが、当時じゃ速かったほうなんですかね(笑