羅臼のホテルで目覚めてカーテンを開けると、根室海峡の向こう国後島から登る朝日がまぶしいです。
空にはゴツゴツしたような雲が浮かんでいますが、ところどころ真っ青な晴れ間ものぞいています。
今日は今回の北海道旅で、昨日の「知床峠で羅臼岳を望む」とともに楽しみにしていた「ホエールウォッティング」の日です。
今までに水族館のイルカやシャチ以外で野生のクジラを見たことはありません。
二年前の道東ツーリングでこの羅臼にも立ち寄りましたが、小雨まじりの天候でホエールウォッチングの船に乗ることは諦めていました。
でも今年は違います。
ここ羅臼では自然のクジラを船から見るホエールウォッチングが盛んで、観光の大きな目玉の一つになっています。
そのための船も三、四艘あるようです。
羅臼の漁港から出港してクジラやイルカなどを探しながら航行する2時間半ほどのクルーズです。
料金はどこもだいたい8千円前後ですが、羅臼の宿に宿泊している人は割引があります。
この時期に見られるのはマッコウクジラやイシイルカです。
ツチクジラやシャチなどは6月から8月ころの方がよく見られそうです。
もちろん野生の動物相手、しかもこれだけ広い大海原の中から探すのですから、必ず見られるという保障はありません。
実際に観光で訪れて船に乗った方のネットの記事でも「見られなかった」というものも多数見受けられました。
でも出来るだけ遭遇できるように、同時に出航する観光船同士、相互に連絡を取り合ってクジラを見つけると情報を共有して教え合っているそうです。
またそれだけではなく、昨日立ち寄った羅臼灯台近くの「クジラの見える丘公園」にいる長崎大学の学生さん達が交代で地上から観察して、見つけるとここからも情報を送ってくるそうです。
私たちが泊まったホテルにはフロントに大きなマッコウクジラの模型が天井から吊り下げられていました。
これが見られたらいいですね。
昨日のチェックインの際にフロントの方から「明日のホエールウォッチングに参加されるようでしたら予約を入れておきます」と言われました。
料金は宿をチェックアウトする際に支払います。
出航するかどうは当日の天候次第なので、朝7時すぎに教えてもらえます。
天候に恵まれて大きな波のうねりも無いのでホエールウォッチングの船は出航出来るようです。
ところでクジラ観察用の船は、フェリーや湖などにある大きな観光船とは違って、漁船よりは一回り大きいという程度の船です。
これで外海に出て波にもまれるとなると船酔いが心配です。
子供のころ、学校の遠足のバスで酔った事のある私ですが、大人になってバイクでコーナリングしたり、台風で次の便から欠航というフェリーや大きく揺られた観光船に乗って平気だったので大丈夫でしょうけど、念のため乗り物酔いの薬を飲んでおきました。
結果的にはまったく船酔いすることなくクルージングを楽しめました。
泊まった羅臼の宿から港まではクルマで10分ほどです。
出航の30分前、8時半ころに港に着きました。
クルマで来ていない方には宿で送迎用のマイクロバスの用意もあるようでした。
港には駐車場のスペースもあり無料で停められます。
漁港の一角にこの宿用のホエールウォッチング受付用のログハウスがあり、中で「乗船名簿」に私と妻の名前を記入し、波をかぶったり防寒用のコートを受け取りました。
9月の羅臼の海に出るというので、今回の旅ではコンパクトになるダウンジャケットを持ってきましたがまったく必要ありませんでした。
日差しが出ていた事もありますが、普通の長袖シャツの上に軽いカーディガンを羽織ってその上に借りたコートだけで海の上でもまったく寒くありませんでした。
乗船前に救命ベストを着用します。
こうしてかなりゴッツイスタイルになった私たちです。
後ろに見えているのが泊まった「羅臼の宿まるみ」が所有している船「アルラン三世」です。
何艘かある観光船の中でも速度が速く、定員も多いようで、さらに特徴的なのは「操舵室でエンジンを停止することが出来る」そうです。
ほかの船は停止することは出来ますがエンジンを停止するためには機関室の降りなければならないそうです。
それによって何が違うかというと、クジラの発見のために水中ソナーで音を拾うためにはエンジンが停止している必要があるんです。
これでどちらの方角で音がするかわかれば、その方向にクジラがいることがわかるので遭遇する確率があがるのです。
船内キャビンも前室のジュウタン敷きのところやベンチ付きのところの二室と広々しているので波が高い時も平気そうです。
実際には船上デッキにいて手すりにつかまりながら風に吹かれて遠くの外を見ている方が船酔いしないのでいいようです。
もっともクジラを見つけたい一心で来ている訳ですから、乗船してからずっとデッキで広い船原を眺めていました。
9時出航予定でしたが、参加メンバーが揃ったので少し早めの8時40分ころ出航しました。
防波堤のある港を出て外海に出ると少しだけ波が高くなります。
ラフな格好の船長さんは宿の社長さん、ほかにはクジラ探しの名人のオヤジさん、それに長崎大学の捕鯨調査の男性、女性の学生さん二名が乗っています。
お客さんは私たちを含めて10名ほどと少なかったので船上の左右いろんな場所から余裕で眺める事が出来ました。
知床半島の東海岸が見えています。
クジラが泳いでいるエリアまでは船で30分ほど行ったところになります。
でも国後島との参考ライン以降にはいかないようにしていました。
乗っているお客さん全員、みんなクジラを見つけようとはりきっています。
オヤジさんも船尾の見晴台の上に登ってクジラを探しています。
私たちには波頭の白いところと見分けがつかないような、はるか遠くで小さくクジラが塩を吹いたのを見つけると、すかさず船長に伝え船を全速力でその地点に向かわせます。
長崎大学の学生さんも船首に立ってクジラを探しています。
この時期、ここで見られるのは主にマッコウクジラです。
頭が長く巨大なのが特徴で体長はオスで16mから18mもあります。
ほかのクジラと違って体の後ろ半分や背びれから後ろの背中がデコボコでしているのが特徴です。
また潮を吹く方向もほかのクジラが真上なのに比べて、斜め前方に吹くのが違いなので離れていても見分ける事が出来ます。
船長さんに何を食べているのか聞くと「イカだよ」と教えてくれました。
そしてホエールウォッチングの最大の見せ場、クジラが潜っていくときの尾びれを高く上げる様子が圧巻です。
マッコウクジラはクジラの中でもかなり深い場所まで長時間潜っていけます。
そして息継ぎのために海上に出たときは呼吸をするのですが、それが噴気孔から行うのでその息が白く潮を吹いているように見えるのです。
そうして何度か潮を吹いて呼吸したあと、背中を大きく猫背のように丸めます。
これが「ペダンクルアーチ」という形です。
その後頭を海中に向けて沈めていき反対に尾びれを高く海上に突き上げます。
その時に尾びれを腹側に丸めて高く上げた形が「フルークダウンダイブ」ということになります。
ホエールウォッチングの写真などでクジラの尾びれだけが海上に出ている写真がこれになります。
「クジラの潮吹き」「背中全体を海上に出しているところ」そしてこの潜水直前の尾びれを高々と上げた「フルークダウンダイブ」を生で見て写真に撮れたら最高です。
「クジラがいたぁ! しおを吹いたぞ!」
高い見張り台の上のオヤジさんのその声でみんな一斉に指さす方を眺めますが、どこにそれがあるのかよくわかりません。
船が風を切って波を上げて進み、近くまでくるとようやくわかるようになりました。
ただまだかなり遠かったと見えて船が近づく前に尾びれをあげて潜っていってしまいました。
それででも「クジラを直接見られた」という事だけで興奮しました。
マッコウクジラはいったん海の深いところに潜ると、最低でも30分、長ければ1時間くらいは再び海上に姿を見せません。
この海域に何頭くらいいるか聞いてみると「三、四頭かな」という返事でした。
「またいたぞ! こんどは近いぞ!」
二頭目発見です。
今度は私たちは早々に潮を吹いているところ「ブロー」を見つけられました。
船はゆっくりと近づいていきます。
なんどか潮を吹くその様子は、説明にあったように斜め前に上がって行ってます。
そしてクジラの背中が海上に姿をあらわすと、カメラの望遠ズームで近寄り過ぎると離れていても全身が映りきらないほど大きいです。
一度、おおきなひれが垂直に上がりました。
一見するとシャチの背びれのようですが、マッコウクジラが横になって尾びれの片方が出ているところでしょう。
船長さんがクジラの息継ぎの様子を見ながら、「そろそろ次あたりで大きく潜るぞぉ!」と教えてくれます。
そして背中を丸めた「ペダンクルアーチ」の後、
ついに近くで「フルークダウンダイブ」の姿を見て、カメラに収める事が出来ました。
背中から大きく尾びれを持ち上げた時に一緒にあがった水しぶき。
そしてそれが尾びれから滴り落ちるさま。
高々と上がった尾びれはそのまままっすぐ真上に伸びて、その後水中に消えていきました。
停止している船は波に大きく揺られているので手ぶれしますし、水平線の位置、画角も安定しません。
それでもデジ一の連写機能で撮影した中から何枚かを掲載しました。
テレビとかでは見たことがありましたが、間近で、生で見た迫力は感動モノです。
これで二頭のクジラを見て、しかも二頭目はかなり近い場所で観察する事が出来、大満足です。
でも長崎大学の学生さんとオヤジさんは、船頭さんと話をして水中ソナーのようなものを使い始めました。
詳しいことはわかりませんが、T字型の大きなスティックの先のセンサーを水中に沈め、少しずつ角度を変えて水中にいるクジラの音を拾って、どの方向どれくらい先にクジラがいるのか分かる装置のようです。
これを使うためには船のエンジンを切る必要があるんです。
船は走っている時の方が揺れが少なくて、その場に停まっているときの方が大きく揺れるので手すりにつかまっていないと倒れてしまいそうになりました。
最初に書いたとおり同時にホエールウォッチングに出ている船同士、情報共有しているのでクジラを見つけるとみんな集まってきます。
このおかげで向こうの船の方が撮った写真の中に、私たちと船が写っていたのがあったので引用させていただきました。
※(「羅臼町・ゴジラ岩観光 ニュース」url:http://kctwhale.blogspot.jp/ からお借りしました)
そうしている間もなく、三頭目のクジラ発見!
船は全速力で現れた方角に向かいます。
今回は南の方角、少し離れた方向にいたようです。
今回のクジラは何度も息継ぎをしてなかなか沈まないようでした。
ようやく背中を丸め、尾びれを海上に突き出しました。
さらにさらに「四頭目のクジラ発見!」
こんどは少し陸地に近い方で出たようです。
間に合うでしょうか。
なんとか息継ぎの様子から尾びれを上げているところまで、見る事が出来ました。
今回はちょっと角度が横になってしまったので前回のような絵にはなりませんでしたが、それでも迫力ある写真が撮れました。
超ラッキーなことに四頭ものマッコウクジラに出会うことが出来ました。
シャチは元々季節が違うので無理でしたが、船の横を一緒に泳ぐイルカには出会いたかったのですがそこまで求めてはぜいたく過ぎますね。
今回、一緒の船でホエールウォッチング出来たお客さんみんな、満足した笑顔でした。
灯台の横の「クジラが見える丘公園」
防波堤の上に一列に並んだおびただしい数のかもめ達
港には少し早めの11時ころに戻ってきました。
港には夜の間に漁を終えたイカ釣り漁船が係留されていました。
今日はずっと天気がよかったので、海の上で潮風に当たりながらずっと居たので顔がけっこう日焼けしましたが、この思い出はずっと残ると思います。
いやぁ、マッコウクジラはデカかかった!
山歩きのルート、飛行機での空路記録を記録するなら「GPSロガー」がお勧めです。
コメント
熊 さんへ、
はじめてホエールウォッチングというものを体験してみましたが、
天気にも恵まれ、なによりいっぱいのクジラに逢う事ができ、
最高に感動しました。
たしかにあの青空の下、大きな海にいると
日常のイヤな事を忘れてしまいますね。
ホエールウォッチング最高ですね。
綺麗な空、綺麗な海、綺麗な空気、
拝見させて頂く限り現実の世界に戻れる気がしない位の出来事ですね。
本当に壮大な素晴らしい写真ばかりで感動しています。
isaboten さんへ、
はい!
クジラに出会えました。
しかも近くで四頭です。
もう感激です。
北海道の空の色は独特な青い色をしています。
海の色も違いますね。
メカ好きアン さん、(*・ェ・*)ノ~☆コンバンワ♪
クジラに出逢えたんやねぇ~
良かった ( ´___` )
楽しく拝見してますよぉ~
雲 眺めてるの好きなんで キレイな写真がまた 嬉しいです(≧∇≦*)