こどもの頃から25年間住んでいた豊島区の駒込。 昔そこには都電が走っていました。
国電の駒込駅のすぐ近くに、都電「駒込駅前」停留所と営業所さらにその奥に電車の車庫がありました。
両親の実家がどちらもこの都電19系統沿いの「東大追分」停留所と「本郷三丁目」停留所にあったので、親に連れられてチンチン電車に乗って遊びに行っていました。
そんな都電も私が13歳の1971年に廃止になってしまい、線路はもちろん営業所や電車車庫も撤去されました。
こどもだったため写真に撮るということもなく記憶もあいまいになってしまいましたが、なんとかあの停留所と車庫の風景を再現できないかとずっと思い続けていました。
最近になってそんな駒込駅の当時の姿を写した写真を見かけたのでこの情景を再現しよういう思いが強くなりました。
できることならジオラマにして立体的につくろうと思い構想を練り始めましたが、あまり大きいものではなく都電と線路、営業所と倉庫の一部が再現できれば十分だと考えました リアルさより、懐かしい当時のイメージが表現できればいいと考えて描いた全体像です。

これをいつもジオラマづくりに使っている100均のケースに納まるようなサイズで図面にしてみました。

営業所と倉庫を盛り込もうとすると線路は複線だとケースに収まらないので単線にしてしまいました。
こんな形で配置すればなんとなく当時の思い出を表現できるでしょう。

縮尺はNゲージと同じ1/150に決定。
Bトレインショーティの都電やミニ電車の模型を持っていましたので最初はこれを使うことも考えていました。 でも営業所や倉庫は3Dプリンターで作るつもりでしたのでせっかくなら都電の車両も含めてすべてのアイテムを3Dプリンターだけで自作することにしました。

それでも参考までにBトレの都電パーツをRevopointの3Dスキャナーでキャプチャーしてイメージを確認しました。

都電の車両をAutodesk Fusionでモデリングしました。

レタリングしたモノです。 小さなケースに納めるジオラマなので実物より短めにしてあります。

路線を走る都電の後方には営業所、奥には待機車両がある車庫にしてそこに何両か置いてみました。

営業所と車庫の屋根、線路や電柱もモデリングしてレタリング、窓やガードレール、花壇の柵なども配置してみました。
ここまでやったらなんとなく模型のジオラマになくてもこの作図だけでもいいかなとなんて思えてもきましたが、それでもやはり立体化を目指します。


※ここまでのメイキング動画です。
ちょっと苦労したのは路面に埋め込まれている線路です。
これも市販のトラムラインのレールを使わずに3Dプリンターで作る土台となるベースに埋め込むのですが、カーブや支線とのつながり部分の作図に苦労しました。

都電ボディのカラーは薄い山吹色に赤いラインが入っているですが、持っている3Dプリンター用フィラメントが明るい黄色だったのでとりあえずこれでつくり、折り紙の赤い紙に両面テープを貼ってラインを入れ、屋根と台車をグレー、ビューゲルを黒のフィラメントでつくりました。

ここまでで出来CGデータを3Dプリンターで印刷したものをケースのベースに並べてみました。
最初にも書きましたがリアルさを追求したジオラマではなく、私の思い出にあるこどもの頃のイメージ優先で表現したつもりです。
1960年代の道路にはダイハツのミゼットもよく走っていましたのでこれも3Dプリンターで作ってみました。

ベースに埋め込んであるレールの間の部分は敷石を表現した模様をいれて3Dプリントし直しました。

夕焼けに照らされた風景のように撮影してみました。
車体に貼るシールの一部はBトレのものを流用しましたが、19系統のマークや行き先案内板、電柱の表示はパソコンで印刷したものを貼ってあります。

制作を始めてしばらく経った頃に多色印刷できるBambu Lab A1 Comboを購入しましたので、都電のボディもマルチカラーで印刷してみました。

多色印刷した都電は、塗装はせずにタミヤのウエザリングマスターだけで黄色いボディの色を落ち着かせ長年働いてきた汚れも表現してみました。

都電のビューゲルに給電する架線(トロリー線)も、ふつうは針金を使うのでしょうけどこれも3Dプリントでつくります。
何度か試作を繰り返し線の色も金、銀、黒と試して最終的には黒くて細いものに変更しました。

営業所に掲げられていた「東京都交通局 駒込電車々庫」のプレートもつくりました。 あまり小さいと文字が崩れてしまうのである程度のサイズにする必要がありました。

左上がそのプレートと立てる為のスタンドですが、それ以外にもストラクチャーに小物類を配置するとより雰囲気が出るので追加しました。
はしごや煙突、花壇の枠、ドラム缶や消火栓、防火用水、車両倉庫の柱に付ける配管などです。

段々と形になってきましたのでここで都電やストラクチャーにウェザリング処理を施します。
このジオラマのモットーは、
・3Dプリンターだけでつくる(市販品は使わない)
・塗装はしない
としています。

営業所と停車場車庫、そして都電をウェザリング処理しました。

塗装はまったくしてなくてこのタミヤのウエザリングマスターと左上の100均で買ったアイシャドパレットだけでもけっこう古びた感じが表現できているなと思います。

※ウェザリングの作業工程は動画でも紹介しています。
電柱の色は最初当時の写真にあった緑にしようかとも思いましたが、そこだけ浮いてしまうのでベースや建物と同じグレーにしてウェザリング処理を施しました。 駅名標はパソコンで紙に印刷したものを風雨にさらされて劣化した感じに仕上げています。

このジオラマには街路樹を2本配置します。
今まで作ってきたジオラマでは樹木の幹は本物の小枝を使ったり配線の中の銅線をよじって作っていましたが今回はこれも3Dプリンターで制作します。

印刷する時にスライサーソフトでファジースキン処理をして表面をザラザラに表現してみました。

葉っぱは光栄堂ランドスポンジのグリーンを使用しました。

枝にボンドを塗って貼り付けていきます。

使うのは2本だけですがスポンジの色や樹形など、いろいろ試して気に入ったものを使いました。

土台となるベースも全体にウエザリングマスターでくすんだ処理にして停車場の前は地面なので砂利を撒いて雑草を植えました。
ドラム缶と消火栓も真っ赤なフィラメントでしたがウェザリング処理したので古びた感じになりました。

1960年代の情景を表すアイテムとして当時の電話ボックスを設置します。 そのカラーリングから「丹頂型」と呼ばれていましたものですがこれも3Dでモデリングしたものです。

1/150だと高さ17ミリくらいなのでFDM方式3Dプリンターだとここまでの再現度が限界でしょうか。

ジオラマに生活感を与えより生き生きと見せるのに人物を配置します。
Nゲージ用の1/150のフィギャアが販売されていますが、これらも自分でCGモデリングして3Dプリンターで印刷しました。
色を塗らずあえてオレンジ色単色で表現しています。

最初のフィギュアを作った時にChatGPTに「どういう配置にしたら存在感のある情景になるか」と訪ねたらいくつかの案とポーズを指摘されましたので、それらのポーズを取った人物をモデリングして追加しました。

はい、おまたせしました。
ここまでの作業を終えて完成した作品をご覧ください。
「こどもの頃の懐かしい都電、駒込駅を作りたい」と思い始めて30、40年。
実際に制作に着手してから1ヶ月で完成しました。
都電19系統、国電駒込駅横にあった都電の「駒込駅前」停留所と営業所の建物。 そして奥には停車場に待機している車両と車庫です。

上から見た全体像です。

線路はこのジオラマケースに合わせて単線になっています。

走っているのはダイハツ・ミゼットとトヨエース・トラック

停留所前にやってくる都電を待つ人たち。

このケースにはクリアカバーがあるので破損やホコリから守ってくれます。
手の上に乗るサイズで昔の思い出が蘇ってきます。


右奥の営業所前にいる人は回数券を買っているのでしょうか。

車庫から出てくる始発電車に乗り込む人たち。
よしずの掛かったパーゴラの奥野営業所では、回数券を販売する窓口がありました。
公衆電話で話している人、その横には待っている人。
電話ボックスや電柱の位置はジオラマとしての見栄えを優先して当時の写真で見た配置とはちょっと変えてあります。

営業所前の花壇には花も咲いているようです。

街を歩く人々や電話ボックスが当時の生活を思い出せてくれます。 この中に子どもの頃のわたしもいるでしょうか。

飛鳥山公園、霜降橋の坂から登ってくるような風景に見えます。

この先には上富士交差点、そして東大、本郷、万世橋と続きます。

懐かしい思い出のジオラマ、こどもの頃乗った都電の「チンチン」という車内の音が聞こえてくるようです。
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