室蘭市立旧絵鞆小学校といえば、俳優の安田顕さんの母校であるとともに、二つの円形校舎が並ぶとても珍しい学校建築です。
その特徴的な姿に魅せられて3Dプリンターで小さなキーホルダーを作ったことがきっかけとなり、やがて二棟の円形校舎を再現したジオラマを制作することになりました。
そして、うれしいことに完成したジオラマは旧絵鞆小学校の校内に展示していただくことに。
さらに、制作したミニサイズの旧絵鞆小学校キーホルダーも校舎で販売していただけることになりました。
自分が3Dプリンターで作った小さな作品が実際の校舎の中で訪れた人に見てもらえる。
これは、ものづくりを趣味にしている私にとって、とても感慨深い出来事でした。
きっかけは、全国の円形校舎を描いたこと
きっかけは、昨年の夏ごろ。
日本各地に残る、かつての円形校舎の小学校をいくつか描いていました。
三重県の朝日小学校、石狩小学校、美唄市の沼東小学校、江別市立江別第三小学校など。
その中の一校が、北海道室蘭市の絵鞆小学校でした。

旧絵鞆小学校は、円形の校舎が二棟並んでいる独特の姿が大きな特徴です。
1958年(昭和33年)に教室棟、1960年(昭和35年)に体育館棟が建設され、2015年(平成27年)に閉校しました。
現在も二棟が保存されており、全国的にも非常に珍しい「二つの円形校舎が一対になった姿」を見ることができます。
小さなキーホルダーから始まった
最初は校舎を描いた画像でした。
ところが、そのうちの何校かを小さなミニチュアのキーホルダーにしてみたところ、絵鞆小学校ももう少し立体的に作ってみたくなりました。

そして制作したのがこちらの旧絵鞆小学校キーホルダーです。

今年の春には多色印刷ができる3Dプリンターを導入しました。
そのテストモデルとして、以前作ったキーホルダーの屋根を赤いフィラメントで作り直してみました。

「実物の旧絵鞆小学校に送ってみよう」
ちょうどそのころ、インターネットで旧絵鞆小学校が保存され、期間限定で一般公開されていることを知りました。
そこで、せっかく作ったキーホルダーを室蘭の旧絵鞆小学校へ送ってみようと思ったのです。
保存・管理されている方に問い合わせたところ、学校宛てに送ってほしいとのお返事をいただきました。
そこでふと思いました。
「せっかく送るなら小さなキーホルダーだけではなく、もう少し大きなジオラマも作ってみよう」
こうして、旧絵鞆小学校の二棟の円形校舎を再現したジオラマ制作が始まりました。
キーホルダーとは別に一からCADデータを作り直す
小さなキーホルダーと、展示用の少し大きなジオラマでは必要な精密さが違います。
キーホルダーでは省略していた部分もあったため、ジオラマ用にCADデータを一から作り直すことにしました。

校舎左側にある大きな柱は、実際の校門付近にあった学校名が書かれた柱をイメージしたものです。
「どこの学校のジオラマなのか」が一目で分かるようにデフォルメして大きめに作りました。

3Dプリンターで二連円形校舎を立体化
データが完成したら、いよいよ3Dプリンターで印刷です。
キーホルダーでは校舎のベースを白で作りましたが、ジオラマでは年月を経た建物の雰囲気を出すため、アイボリーのフィラメントを使いました。

いくつかのパーツに分割して出力しています。
写真の手前と奥にあるものは二組のモデルです。奥側は試作品で二棟の連結部分や校舎側へのはみ出し、体育館棟のオーバーハングなどを確認・修正するためのテストモデルです。
体育館棟の屋根は単純な赤ではありません。
赤とグレーのフィラメントを組み合わせて、実物に近い色合いになるようにしています。
さらに、体育館の内部には、屋根を取り付けるとほとんど見えなくなってしまう部分ですが、講堂としてのステージまで作りました。

砂利や草まで再現して展示用ジオラマに
完成したジオラマは、展示した際の破損やホコリを防ぐためケースに入れることにしました。
ケースの台に合わせて校舎の周囲には砂利や草も表現しています。

3Dプリンターから出力したままでは、どうしても「プラスチックで作った模型」という感じがします。
そこで、校舎の表面にウェザリングを施しました。
少し汚れや色あせを加えることで長い年月を過ごしてきた校舎の経年劣化や風合いを表現しています。

子どもたちと訪れた人の姿も加えて完成
校舎だけでは少し寂しいので、実際に校庭で遊んでいる子どもたちや、校舎を訪れた人々も配置しました。
また、校門の柱には、実際の写真からスキャンした学校名の文字を貼っています。

そして、二棟の円形校舎を並べた室蘭市立旧絵鞆小学校のジオラマが完成しました。

完成したジオラマを旧絵鞆小学校へ
完成したジオラマを、改めて旧絵鞆小学校を管理されている方に連絡してお送りすることになりました。
このとき、二棟のジオラマとキーホルダー10個を一緒に送りました。
キーホルダーはスタッフの方や関係者の皆さんにお配りいただければと思っていました。

そして届いたジオラマは、なんと旧絵鞆小学校1階の受付・事務室の棚に展示していただきました。

自分の家で飾るために作った模型ではありません。
3Dプリンターで一つひとつ作った小さな作品が、実際に保存されている本物の旧絵鞆小学校の中に展示されている。
写真を見たときは本当にうれしくなりました。
キーホルダーを旧絵鞆小学校で販売していただくことに
さらに、思いがけないうれしいお話をいただきました。
スタッフの方から、
「キーホルダーを展示すると購入を希望されるお客様がいると思うのですが、これを納品していただき販売することは可能でしょうか?」
とのお問い合わせをいただいたのです。
CADでデザインし3Dプリンターで出力する作品は商用利用が可能な環境を整えているため、ご注文を受けて制作することにしました。
最初にお送りしたものには色違いもありましたが、販売用として3色のキーホルダーを制作しました。

パッケージにも「旧絵鞆小学校」の名前を
販売していただくことになったので、キーホルダーだけでなくパッケージも少し改良しました。
パッケージのデザインも二種類に増やしました。

さらに、小さなタグに「旧絵鞆小学校」と学校名を印刷したものも追加しました。

こうして完成したキーホルダーは、現在、旧絵鞆小学校で手に取って購入していただくことができます。

卒業生の思い出と、訪れた人の記念になれば
旧絵鞆小学校の二つの円形校舎は、単に「珍しい形の学校」というだけではないと思います。
そこには、かつてこの校舎で学んだ子どもたちの記憶があり、地域の歴史があります。
そして今も、この特徴的な校舎を見に室蘭を訪れる人がいます。
そんな場所に、自分が3Dプリンターで制作した小さなジオラマが展示され、さらにミニサイズのキーホルダーまで販売していただけることになったのは、作り手として本当にうれしいことです。
卒業生のOB・OGの皆さんには、懐かしい母校を思い出す小さな記念品として。
旧絵鞆小学校を訪れた皆さんには、二連につながった珍しい円形校舎を訪れた記念として。
この小さなキーホルダーが、そんな思い出の一つになってくれたらうれしいですね。
そして、いつか実物の旧絵鞆小学校を訪れた方が、受付の棚に展示されたこのジオラマを見て、
「この小さな模型も3Dプリンターで作られたんだ」
と楽しんでいただけたら、制作者としてこれほどうれしいことはありません。
室蘭の貴重な「二連円形校舎」を、これからも
昭和30年代に建てられ、長い年月を子どもたちとともに過ごしてきた旧絵鞆小学校。
その特徴的な二つの円形校舎が、今も室蘭の地に残されていることは、とても貴重なことだと思います。
私自身、最初は一枚の画像から始めた制作でした。
それがキーホルダーになり、ジオラマになり、そして今では本物の旧絵鞆小学校の校内に展示され、キーホルダーまで販売していただいている。
ものづくりを続けてきて、こんな形で自分の作品が誰かの思い出や、建物を残していく活動につながるとは思っていませんでした。
これからも、3DプリンターとCADを使って、古い建物や思い出の場所を「小さな形」で残すものづくりを続けていきたいと思います。
室蘭の旧絵鞆小学校を訪れる機会があれば、ぜひ二つの円形校舎と、受付の棚に展示された小さなジオラマも探してみてください。
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